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20111206 KinKi Kids「K album」全曲レビュー
発売から約1か月を経て、いろいろ考えたことなど。
無駄に1万字以上あるのでw、お暇なときにでも読んでもらえたらうれしいです。

1.願う以上のこと 祈る以上のこと
イントロのキラキラ感にいっぱつでやられて、何この多幸感!と思っていると、意外と重めなAメロに入ってくという。幸せ一辺倒じゃない、生真面目さにおいてドリカムとキンキは親和性があると思います。
「願う以上のこと 祈る以上のこと」っていうのは、わたしは行動を起こすということだと解釈しています。ラジオ(今さら@NHK)で剛さんもドリカムのふたりが仙台に行かれたことについて、そこで得たことが美和ちゃんの歌詩にも反映されているんじゃないかなんて言っていましたが、わたしもこの曲はラブソングの体裁をとった復興ソングだと思っていて。もちろんラブソングの文脈で読まれることを前提として書いた詩だとは思うのですが、特に2番のBメロ「どんなに願ったって祈ったって だめなんだ/もう一度だけ言わせて」というところが象徴的。「願ったって祈ったってだめ」というのは、イコール言葉の無力さ、歌の無力さということだと思うんです。震災を受けて、多くのアーティストは歌うことの意味と真正面から向き合うことになりましたが、そこで一度ならず、歌っている場合ではないと思うようなこともあったと思います。それが願いや祈りという言葉の無力を訴える歌詩に繋がっているのではないでしょうか。
また、1番の歌詩に立ちかえってみると、「気持ちを伝えきる言葉は 永遠に/見つからなくて ただきみを 不安にさせただけ」「思う気持ちはきっと ただそれだけじゃだめなんだ」とあり、1番では想いを言葉にすることの困難が説かれていますが、2番では「願ったって祈ったってだめ」、だけど「もう一度だけ言わせて」と言って、「願う以上のことを 祈る以上のことを やるしかないんだ」と決意します。つまり、自分の想いを言葉にすること、そしてそれ以上にその言葉を行動に移すことの重要性がこの曲のテーマなのです。これは言葉を行動へ、歌を行動へ結び付けて行くという、3.11後のアーティストとしての決意表明なのではないかというふうにわたしは受け止めています。そして「証明するから 見てて 見てて」。この生真面目さ。この曲をドリカムのふたりがキンキに提供してくれたのは、こういう言葉をまっすぐ放つのにふたりが適任だからじゃないかな。そして「証明」できる男たちだからです、きっと。

2.同窓会
この曲の「花金」感がやたら好きです。CHOKKAKUアレンジのこのキラキラ感、週末のアフター6の空気感といったらいいんでしょうかね。飲み行こっ!て感じ。
最初はかなりさらっと「いいんじゃない?」くらいの感想で聴いていた曲ですが、歌詞をよく見ると案外挑戦的というか、松本隆的ファンタジーに酔いたい人間にかるくビンタをくらわすような、妙に生々しい言葉がぽんぽん出てきます。「未婚」だの「飲みすぎ」(飲酒の連想)だの「バツイチ」だの、いくら30越えとはいえ、アイドルポップスにはなかなか出てきません。バツイチ!この言葉の響きが特に攻撃的です。
それでもってここからが松本御大の本領発揮なわけですが、バツイチなんてNGワードが出てくるくせに、歌詩がリアル一辺倒にはならない。2番のAメロは「君の白い指」をきっかけに過去の光景が蘇るという御大ワールドの最高潮で、「おさげの君」なんて2011年に書いていいのは御大だけです。だけども、再会したふたりの過去を掘り下げることはしないわけですね。ノスタルジアを描くための同窓会というテーマではない。ではこの曲は何を書きたいのかと考えていくと、「大人の戯れ」なのではないかと。子どもだった青春時代のこころはそのままに、大人になった未婚の男とバツイチ女が一夜の戯れ、ってエロいよね!って曲なんじゃないかと思うわけです。エロいというか、「ジョークのつもりで告」っておきながらあくまでもふたりは一線は越えない仲なんだけれども、「無言で片手で抱き寄せて/優しく叩いたよ/それしかできなかった」なんて切ない優しさともどかしいぎこちなさを未だに持ちながら、お互いに今のままでいることが記憶を綺麗に取っておく方法だと分かるくらいには大人になっている…っていうのがなんとも言えず、いいっす。さすが御大、あっぱれです。
ふたりの歌声に関して、というか剛さんのハモリ声についてなんですが、このアルバム通して剛さんのハモリが以前に比べて素晴らしく“ハモっている”ことに感動しました。以前の剛さんは上でも下でも必要以上に声が聴こえてしまう、これは声質なのでしょうがないんですが、剛さんのハモリと言えばそれがネックでした。(光一さんの声が後ろに引っ込みやすいってのもあるんだけど)それがKアルでのこの綺麗な裏方具合。光一さんの声ちゃんとメロに聴こえるよ。特にこの曲の1番Bメロ。「いいけどねちょっと飲み過ぎて/舌もつれてる気がするよ」ってところ!最高です。2番のメロ剛ハモ光一よりいい。以前なら光一さんハモパートを断然推していましたが、今回は剛さんの躍進が凄まじいですねー。ユニゾンだけでなく、ハーモニーでもますますシンクロ率を上げてきているのかな、なんて。

3.危険な関係
アルバム発売に先行してラジオで楽曲を聴いたとき、一番衝撃を受けたのはこの曲でした。歌詞もそうなんだけど、メロディと展開があまりにも拓郎節なので。CHOKKAKUさんのアレンジもまた格別ですよねぇ。拓郎のデモは弾き語りだったみたいですが、それをここまでドラマチックにしてしまおう!という思い切り。素晴らしいです。一聴すると過剰演出のようなんだけど、そのおかげで恥ずかしくならずに聴けるんですよこの曲は。
この曲に関しては解釈の取り方がもうはっきりと拓郎本人によって示されてしまっているので、「はぁ、そうっすか」と思うしかないのですが、まぁファンじゃない人が聴く分には倦怠期カップルとも両片思いともとれるし、歌詩というのは読み方が多様なのが正しいあり方だと思います。
拓郎のキンキ像については、ふむ、って感じ。確か昔懐かしきパーソンのキンキ宛メッセージでは「お互いがお互いの1番のファンであること」がキンキの関係性であると結論づけていた気がするけど、今回はそこからまた一歩踏み込んだところまで考察したって感じなのかな。メディア向けのキンキは「お互いのファンであること」で説明がつくけど、オフの場面でのふたりはどうなんだろう、ってところでしょうかね。映画を見ていて、その映画の物語を「君と僕とのストーリー」に重ねてしまう、というはじまりが絶妙ですよね。しかも「そんなに ステキな話じゃ なかったけど」。あとこのBメロの確実に強がってるだろ感。相互依存を認めないし、周囲からも悟られてはいないんだけど、実はだめだめなくらい依存しちゃってる感じがするよね。「しばり合うよりも ゆるやかでいい」とか言ってるけど本当はしばりたいんだよ、多分。だけどそうできないし、したくないしされたくない、っていうアンビバレントな感情を伴った「危険な関係」。この曲の剛さんの声大好きです。

4.ラジコン
松本隆の真骨頂な世界観が筒美京平のメロディと合わされば、最高の正統派アイドルポップス。好きとしか言えません。この時代から軽々ポーンと飛び出ている感じ。単体のきらめきが素晴らしい曲だと思います。
御大の詩というのは視覚的だなとつねづね思っているのですが、この曲の出だしはいくら褒めても褒め足りません。「模型飛行機 旋回する」、これだけで青空を横切っていくラジコン飛行機の白い機体をパッとイメージさせてしまう。そのあと「空を見上げて目で追う君の視線」、ここでカメラがゆっくりとパンして主体である「ぼく」の隣にいる「君」を映すわけですね。歌詩のモチーフを明らかにするだけでなく、“見る人”としての「ぼく」を印象付ける歌詩だと思います。
またこの「ぼく」のキャラクターが松本御大ど真ん中な、受身というか草食というかどえむというか…な穏やかな青年で、彼女に尻に敷かれている状態を「ラジコン」という比喩で表現するすごさ。「スティックを爪の先で遊んでる」ってエロい、って思ったのはわたしだけではないはず。御大の歌詩は爽やかですが、読み方次第でとっても官能的にも成り得ると思います。多分そういうふうに意図して書いていると思う。

5.さよならのエトランゼ
馬飼野さんらしくないなーというのが第一印象で、今もそのままの印象です。こういうボッサ調の曲は好きなんですけどねー。キンキにはなかったオシャレ路線で。
大人っぽいメロディで耳当たりもいいし、もしかしたらいつものようなアルバムだったら地味だけど佳曲として評価されていたかもしれないのが、これだけ濃い楽曲に囲まれてしまうとちょっと一休み、みたいな曲になっちゃったなーと思います。馬飼野さんの作曲される曲というのはどうかっちゅーくらいドラマチックで破天荒な展開が魅力(参考:Sexy Zone「Sexy Zone」)で、あの置いてけぼりにされる感じがわたしは好きなのですが、この曲はコンパクトにまとまりすぎてしまったのかも。大人になったキンキを意識してくれた結果なのかな、とも思うのですが。
あと歌詩が薄い、ありきたり、面白くない。もうこれはクレジット見たときからわかってたことなんでくだくだ書きませんが。(「Sexy Zone」の歌詞は評価してます。面白いよ)
1番サビの光一さんの、願って〜た〜♪がとりあえず好きです。力んでいる光一さんの首筋を見たい欲を刺激される歌声です。

6.Family 〜ひとつになること
正直KアルにFamilyが入っても、飛ばしちゃうかもなーと思っていました。去年から今年にかけてたくさん聴いた曲だし、これだけの作家陣に囲まれて聴くのはしんどいかも、と。
でもアルバムを通しで聴いて、この曲が歌われる意味、特異性がはっきりと見えてきた気がします。何よりもKを冠した記念すべきアルバムに入る合作曲がFamilyで本当によかった、素晴らしいことだと思いました。
Familyは剛さんが伝えることに全力を注いだまっすぐな歌詞と、光一さんの天才的メロディセンス(こんな作曲能力のある人がロマンティストでない訳がない)の相互作用によって、数ある合作の中でも別格に君臨する楽曲ですが、震災後の日本の状況を予言するようなメッセージを持っていた曲として、更に特別な意味を付加された気がします。これを震災後に出していたら、わたしたちの受け止める気持ちは多分全然違っていて、今ほど素直に「ひとつになること」をふたりと一緒に歌えていなかったと思います。「繋ぎ合わせたいまは/ひとりだけのものじゃない/この景色は数々の犠牲を越えた希望の海」なんて、あの津波を見てしまってからでは、歌詩にできていなかったかもしれないし。わたしはいつもこの部分で震えてしまいます。本当に素晴らしいです。

7.いのちの最後のひとしずく
達郎の最新アルバムからカバー、と一報を聞いたときは「書き下ろしじゃないのか」とがっかりした自分の目を覚まさせてくれたこの曲。キンキのカバーがこんなにいいなんて…。
なんかこう、歌唱力の問題じゃないんですよね、カバーって。元の楽曲に対するリスペクトをどう歌に表すかというのが重要で、その点でこれはアレンジもふたりの歌声も完璧なのです。
光一さんも「達郎の曲はすぐわかる」と言っていましたが、まさしくその通りの達郎節のこの曲。音符の飛びっぷりといい、音に対する言葉のハメ方といい、決して歌いやすい曲ではないし、達郎の独特の歌唱法に頼っている部分が多いのではないかと思っていましたが。ふたりも達郎の歌い方を意識してはいるんだけども、ちゃんとオリジナルなものになっている。リスペクトとオリジナリティの両立がなされているのが素晴らしい。
でもって船山さんのアレンジですよ。原曲のあっさりめなアレンジに対して、こちらは豪華できらびやかで、かつオシャレ。達郎がひとりの声で作り上げた世界を、こちらはふたりぶんの声とラグジュアリーなアレンジを総動員して再構築している。一言で言うと芳醇、芳醇な感じですよ!雨上がりのブドウ畑のど真ん中で空気を思いっきり吸い込んでいるような感じ。雨のにおいと土のにおいと葉っぱの青臭さと熟れはじめたブドウのかおりと…そういう芳醇な響きがあるな…。(伝わりにくい表現ですみません)

8.ヒマラヤ・ブルー
松本御大、今回3作目。個人的にはこの曲がKアル収録の御大作詩曲のなかで一番好きであります。初聴きの際は健さんのアレンジちょっと野暮ったいかも?なんて思いましたが、今はそれも含めて大好きになりました。聴けば聴くほど唸らずにはいられないような味わい深い歌詩と、おだてつの清涼感溢れるメロディ。特にサビの駆け上がるようなところ、パーっと風景が開けるようなメロディで、このメリハリがおだてつだなぁと思います。
歌詩に関して、光一さんが「ミネラル・ウォーター」という“人工物”が出てくるところに注目されていてなるほどと思いました。1番の「ミネラル・ウォーター」が2番の「綺麗な真水と空気さえあれば」を引きだすという構造なんだなと気付かされて。この曲は1番を聴くかぎりでは、ヒマラヤを舞台にした恋人たちの壮大なラブソングとも受け取れますが、それが2番で思わぬ方向へ行く。「神が住む山」=ヒマラヤによって「綺麗な星の上で生きてる」と実感することができたふたりは、しかしその「綺麗な星」を守ることの難しさについても想いを馳せることになる。つまり「ヒマラヤ・ブルー」はメッセージソングなんですよね。もっと言っちゃえばエコロジーを訴えかける歌詩なんだけれども、それをこんなにリリカルにスマートに提示するっていうのは、今までポップスで成功例があったかな?と思います。
あとわたしは「自然のぬり絵に今ぼくたちを/描き加えてみる」という部分が好きですね。2番のサビはすごく視覚的な歌詩で、それも映像というよりパステル画みたいな感じがするんですけど、そこに小さくささっと最後に寄り添う人間たちの姿が描き足されるというアニメーションのような動きをイメージしています。なんかこう、エコを謳った曲なんだけれども、人間の活動を否定しないっていうのが松本隆らしい視点だなーと思って。「つづれ折りの谷 バスの土埃」という導入部も、つづれ折りにしろバスにしろ、人間が暮らすために創りだしてきた技術であり機械なわけで、そういう営みは人間にとって不可欠なものとして肯定するんだけれども、過剰な部分はそぎ落とすべきだし、人間の営みの大元にある資源を提供してくれているものに対しての感謝を忘れてはいけない、ということを非常にスマートに言ってくれているんだと思います。
それにしても「綺麗な星の上で生きてると/教えてあげたい」なんて、プロポーズかと思うくらいの殺し文句ですよね。「君に見せたかった/無理にさらうように」ってところのロマンチストっぷりもたまりません。ギリシャ神話みたい。御大はこれがあるから大好きなんですよねー。

9.もっと もっと
これもビックリさせられた曲でした。「ふぇぇ?」と変な声を出したあと、噴き出したような気がしますねw すっごいYO-KINGそのものなので、納得はするんだけど、これ提供しちゃう?っていう、ちょっとした冒険心を感じる曲。YO-KING本人だったらどういうふうにアレンジしたのかなー。今回の提供曲で唯一本人が歌っているバージョンを聴きたい、と強く思った曲かもしれません。
ただこの「こ、これをキンキが…!?」という違和感は嬉しいサプライズ。光一さんは「苦手な曲調」(@テレビガイド)とはっきり言ってましたが、他の提供曲が少なからずキンキを意識して作られている、あるいは元々作家さんとキンキの親和性が高いのに比べて、YO-KINGは自分で作った純粋に「いい曲」を持ってきてくれたんだなーと思います。だから気遣いがない。これはわりとかっちりスタイルを持っているキンキの楽曲の活性化を図るためには非常に重要で、これからはこんなふうに「似合わない」と思われるような曲も挑戦して行ってほしいな。まー別に似合わなくもないんですけどね。わたしはこの曲を聴くと「C album」を思い出しますw プロデュースされているキンキを久々に聴けたという新鮮味があって非常によいです。YO-KING色にジャブジャブ染まってもいいじゃない?光一さんは「Hey!みんな元気かい?」をシングルで切るときに抵抗感があったと話していたことがありましたが、そういう曲を自分たちのモノにしていく作業っていうのは成長するために必要になってきますよね。その後「Time」みたいな曲でシングル切っちゃうまでになったわけだしw YO-KINGありがとう。ぜひまた書いてほしいです。

10.破滅的Passion
カラオケで歌いたい一曲。秋元康の歌詩ってなぜかすごく歌い出したくなりますね。音ハメが気持ちいいのと、伊秩さんの起伏のあるドラマチックなメロディとが合わさって、♪棘が刺っさろ〜うとも〜薔〜薇をつむ〜♪と気付けば口づさんでいることも多いです。
対談(@日経エンタ)で康はアイドルポップスを「700円のラーメンの味にする」とかなんとか言っていてニヤニヤさせてもらいましたが、この曲も言わば「700円ラーメンポップス」と言えるのかなと。康はツボを心得ているんですよね。大衆が入り込みやすいドラマを仕込み、印象的なモチーフ(この場合は薔薇)を象徴的に使う。曲にはっきりとした色付けをするというのが上手い人だと思います。おニャン子にしろ、AKBにしろ、ひばりちゃんの「川の流れのように」にしろ、「セーラー服」とか「ポニーテール」とか「ヘビーローテーション」とか「フライングゲット」とか「川の流れ」とか、イメージを喚起するワードをひとつぽんと提示して、そこから連想されていくイメージが自然と曲に深みを与えていくというのを想定して作っているんだろうなと思いますね。だからある意味どうとでもとれるというか、隙間のあいたストーリー展開なんだけれども、そこに自由に妄想を当てはめてもらってかまいませんよ、という歌詩の書き方だと思う。
歌詩だけじゃなく、全体を通してこの曲は「情熱」を連想させますなぁ。キンキの楽曲として懐かしい、親しみやすさのある曲調。ただ、康の歌の主人公は完全に「大人」なんだよね。そこが松本御大と違っている。どんなに過去を振り返って悔恨したところで、少年だったころの自分を思い出すことはできないというか、少年時代と現在に深い断絶がある。だから終始冷静な感じがするんだよなあ。冷静な後悔の仕方なんだよね。かっこつける余裕もある。わたしはそこのところにちょっと物足りなさを感じてしまいます。

11.2nd Movement
井手コウジさんはキンキさん御用達の作家さんたちのなかでも、特に個人的に贔屓にしている大好きな作家さんです。井手さんと聞いて最初に頭に浮かぶのは「Bonnie Butterfly」「Arabesque 〜千夜一夜の夢〜」「星のロマンティカ」「ミゾレ」などのラブソング路線。この系統の井手ソングはわたしの中で“大げさ”ラブソングという名前を付けさせていただいておりまして、恋人たちの高まる気持ちをボニー&クライドやアラビアンナイト、はてはオリオンとアルテミスにまで仮託して非常にドラマチックに歌い上げるところが“大げさ”で、アイドルのラブソング斯くあるべし、といった感じの素敵な曲が数あるわけですが、今回の「2nd Movement」はそうした系統からは外れた曲で、過去の提供曲で言えば「涙、ひとひら」と同じラインにある力強いメッセージソングです。
この曲の歌詩を「涙、ひとひら」と比較してみると、共通項が非常に多いことがわかります。「As Time Goes By そう僕らを導くあのサーチライト/覚めたくないこのまま 光の方へ/時間がただ続くように人生も続いてく/見果てぬ明日の先へ」という「涙〜」のAメロと、「さあ 何から始めよう? 通り過ぎた軌跡/そして繋がる明日の轍/そう 捲し立てた夢は 今もあの日のように/色褪せぬまま背中を叩く」という「2nd〜」のAメロは、全く同じテーマの変奏であると言えると思います。また、「無垢なままのMy Heart」と「胸の奥に残るイノセンス」も同じことの言い換えです。さらに両者に共通するものとして「涙」というものの象徴性があります。
「涙、ひとひら」はそのタイトル通り、「涙」をテーマとした曲です。曲中で歌われる「涙」は無垢の象徴であり、哀しみとして零される「涙」であっても、光の先にある希望を掴むためのひとつのステップとして前向きに捉えられています。これは「2nd〜」にも共通していて、「さあ どこまでも走ろう 墨のように滲んだ/涙の跡を辿るように」「希望を探して/時には涙、零しても」と、「涙」は過去の哀しみでありながらも、現在と未来を形作るための不可欠なプロセスとして肯定されています。そして、哀しみに暮れてしょぼくれてもタダでは立ちあがらないというのが井手イズム。「涙〜」は「誰かを守るため それでも生きるよ/大地に足跡刻んで」と歌い、「2nd」では「その壁の先に/立ちあがる標になれ」と言い放ちます。かっこいいっす。泣くな、とは決して言わないけれども、泣いた自分に恥じない未来を目指せ、ってところでしょうかね。しびれます。
井手さんの曲はサウンドも毎回凝っていますが、そのおかげでこの曲はKアルのなかで一番時代にコミットした楽曲に仕上がっていると思いました。「TRFみたい!」ときゃいきゃいしたのも事実なのですがw 今だからこそカッコいい90’sリスペクト感、みたいなものが感じられる気がするんですよね。井手さんの曲は作家性が比較的高いと思うのですが(クレジット見なくても一聴して「これ井手さんじゃね?」とわかりそう)、それでいて超王道な感じもして不思議です。とにかく好き。

12.Time
アルバムに入ったら浮くと思ってましたが、曲順のおかげもあって非常にいいですね。よいアクセント。「2nd Movement」からの流れもまとまっていて好きです。コンサートでやるときは「Time」から「2nd Movement」やっての「破滅的Passion」っていう逆の流れが見たいなーなんて思っているんですけど。
いつ聴いてもふたりのボーカルの融け合い具合がなんとも言えない曲ですねー。オートチューンでエフェクトかけてはあると思うけども、それでもこの相互補完作用はハンパじゃないなぁ。ラジオで聴いたときの衝撃ったらなかった。
ここまでサウンドに寄った曲は光一さんのソロでもなかったし、剛さんもこんなふうに抑制された歌声を聴かせることってあまりなかったように思います。これをシングルで切ったということは世間には注目されていないけど、これからのキンキのひとつの指標になりそうな気がするんですよね。振り返った時、「「Time」があったから今これができるね」っていうことがあるんじゃないかな。
「Time」の世界観は禁欲的で人工的な感じがしますね。PVに引っ張られてる部分もあると思うけど。コンサートでパフォーマンスを生で見れるのが楽しみだなぁ。照明に思いっきり凝ってきそう。

13.きみとぼくのなかで
キンキらしい楽曲のエッセンスを集めたような、堂島くんの愛を感じる一曲。キャッチーなメロディで人懐っこいアレンジなのに、冬の寒風のような切なさにすっぽり入り込んだような焦燥感を感じるところが、堂島孝平らしさであり、キンキっぽさなのではないでしょうか。
ボーナストラックのない初回盤ではこの曲をもってKアルが閉じられるんですよね。この曲で終わる、ということを考えると、冒頭の「願う以上のこと 祈る以上のこと」とテーマが共通していて、アルバムが円環構造になっているのではないかと思い当りました。
共通するテーマというのは、言葉の問題。1曲目のレビューで述べたように「願う以上のこと〜」は言葉を行動にしていくことを歌った曲であると思うのですが、「きみとぼくのなかで」は言葉自体の持つ力を問題にしています。想いを言葉にするということ自体が一つの行動であり、それを肯定すべきか否か逡巡している。胸の内には確かな答えがあって、はっきりと共鳴しているのに、その想いを言葉にしてしまった瞬間に偽りになるんじゃないか、誰かを傷つけるんじゃないか、と言葉を飲みこんでしまう繊細さと誠実さ。これはまさにキンキの少年性にも関わってくる問題なんですよね。色んなことを考えているのに、最終的にはぎゅっと口をつぐんで目で語るっていう、不器用さというか。言葉が独り歩きして誤解されることよりも、黙って誤解される方を選んでしまう頑なさというかね。そういう一見ぶっきらぼうに見える懸命さをふたりとも持っていて、それをたぶん同じくらい不器用な堂島孝平っていう人が歌にしてくれたんだと思うんです。「つながってるだろう?」「途切れやしないだろう?」の疑問符をつけずにはいられない弱さとかね。わたしは「飛び出してったコトバのしっぽすらつかめない」っていうところがふたりの感受性を言い表している気がするんですよ。他の人々がやりすごしていることを、看過できない、無視して過ごせない敏感さがあって、「コトバのしっぽ」をどうしても目で追い続けちゃう性格だと思います、ふたりとも。それを世間は面倒臭いって言ってしまうかもしれないけど、わたしたちがふたりを見ていて無性に切なくなる気持ちっていうのは、多分ふたりのそういう感受性の部分からきているんだと思う。鈍感力って言葉から程遠い人たちだよね、本当に。

14.僕が生まれた日
わたしはキンキのファンでありながらバラードがあまり好きではなく、唯一喜んで聴くのが「青の時代」なので、今回のアルバムにcannaのふたりが楽曲を提供してくれたことを知った時の嬉しさったらなかったのですが、期待値をはるかに上回る素晴らしさに本当に感動しました。
この曲はcannaさんたちが震災後に作られた楽曲ということで、キンキのための書き下ろしではなかったようですが、この曲を託して下さったということにはとても重要な意味があるように思えてなりません。「Family」とも重なるような、キンキのメッセージと親和性の高いcannaさんたちのメッセージ。「明日には新しく/零に還るその時を/何度も、何度でも/生まれ変わり生きている」ここに尽きます。こんなに美しい曲を提供してもらえるキンキは幸せ者だと思うし、ふたりともその気持ちに応えるような素晴らしい歌声だと思います。シンプルな楽曲だけに、歌のちからを強く感じる仕上がりになっていますよね。言葉がきちんと聴こえるように歌っているし、ふたりがこの歌詩に命を吹き込んでいるという表現がぴったりだと思う。アルバムのなかで一番好きな曲です。

15.Family 〜ひとつになること [Unplugged]
コーラスの入っていない1番のサビが大好きです。寄り添うような歌声。

【総評】
「集大成とは思っていない」という光一さんの言葉が表わす通り、今までやってきたことをただなぞるようなアルバムではない。さらに言うなら、この「K album」はふたりに科された試練だったのかもしれないとさえ思う。乗り越えるべき関門というか、これをやり遂げないと次に進めませんよっていうハードル。その課題は何だったのかと言えば、KinKi Kidsはポップスの歌い手に徹することができるか、これだと思う。KinKiが今までクリアしてきたステージというのは、まず第一に自分たちのスタイルを確立すること、第二に自らの手でスタイルを造り出すこと―これは破壊行為も含めるとして、今は第三のステージに足をかけているところだと思います。じゃあそこで何をするんだっていうと、求められているものと自分たちの欲求のバランスを取りながら、メッセージを伝達していくという、アーティストとしての最終形に向かって研ぎ澄ましていく作業を続けることだと思うんですね。で、その作業の究極のものっていうのが合作アルバム。そしてその合作アルバムへ向かうために必要なステップとして、「K album」の多様な楽曲たちがあったのではないかと思うわけです。
わたしは作家さんの歌を歌うふたりが好きです。それは色んな職業作家さんの楽曲に色づけられる、アイドルとしてのふたりが好きだから。ポップスというフィクションを演じるふたりの色んな姿を見たいからです。KinKiはこれからまた制作活動に深く関わっていく作業に向かっていくと思うし、KinKiファンとしてはそうあってほしいと思う。けれども、それはわたしの考える究極のアイドルとは違う。アイドルは鏡でなくちゃだめなんです。今回はKinKiが鏡に徹しているところをたっぷりと堪能させていただけるのが何より素晴らしいし、こうやって映した虚像が彼らの創造物にまた反映されていくんだろうと思うと楽しみが増えていきます。こういう営みは完全なシンガーソングライターだったらできない宝物のような体験だと、ファンである身にも有難く感じるようなアルバムでした。個人的には日本語ポップス界においても記念碑的作品になったと思います。時代を創ったと言えるようなものではないけれど、絶対不可侵の聖地のような作品です。流されず汚れずに、いつ見てもおんなじようにずーっと在るんだろうなあ。
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